【石木ダム解説】なぜ50年も対立が続くのか?補償・判決・強行の背景をわかりやすく整理

石木ダム問題の対立 Uncategorized
石木ダム問題の対立

※この記事は、いつものブログの話題とは少し違います。
ただ、長崎県内で長く続いている「石木ダム」について、ニュースやSNSで断片的に目にしても全体像がつかみにくく、「結局なにが争点で、なぜ“強行”と言われるのか」を自分用に一度整理しておきたくてまとめました。
立場を決め打ちするためではなく、まずは制度面(事業認定・収用・供託)と現場の生活実態がどう噛み合っていないのかを、一次情報に当たりながら確認する目的です。
※本稿は、公開されている行政資料・国の資料・報道をもとに構成しています(2026年1月20日時点)。

  1. まず結論:この問題は「公共事業の手続き」と「暮らしの現実」がぶつかっている
  2. 1. 石木ダムとは何を目的にしているのか(行政側の説明)
  3. 2. 住民は賛成・反対どちらが多いのか(“全員が反対”ではない)
  4. 3. ここが本題:補償は「受け取っている人」と「受け取っていない人」が混在する
    1. 3-1. ふつうの(任意の)用地取得:契約して補償金を受け取る
    2. 3-2. 反対で協力が得られない場合:収用委員会の「裁決」へ進む
  5. 4. 「受け取ってないのに、なぜ進むのか?」— 法律のポイントを噛み砕く
  6. 5. 「判決は出ているの?」— 出ています(ただし“何の争いか”が重要)
  7. 6. 手続きの全体像(これだけ押さえると“何が起きてるか”が見える)
    1. A. 事業を“やってよい”とする入口(事業認定)
    2. B. 合意できない土地を“いくらで・いつまでに”と決める出口(収用委員会の裁決)
  8. 7. 年表で追う:石木ダム問題の“いままで”と“いま”
  9. 8. 「出ない(立ち退かない)やつが悪い」の話ではない— なぜ対立が続くのか
  10. まとめ
  11. エビデンス(一次情報・公式資料・報道リンク)
    1. 1) 長崎県(公式:目的・経緯・補償・完成時期・裁判・説明会)
    2. 2) 佐世保市(水道局:必要性・移転状況・漏水対策・再評価資料)
    3. 3) 国(事業認定の一次資料)
    4. 4) 法務省(供託制度の一般説明)
    5. 5) 報道(現状・工期延長・県議会決議・説明会など)

まず結論:この問題は「公共事業の手続き」と「暮らしの現実」がぶつかっている

石木ダムをめぐっては、長崎県・佐世保市が「治水・利水のため必要」として事業を進める一方で、予定地の一部住民が「先祖代々の土地を離れたくない」「必要性や進め方に納得できない」として反対し、 法制度上は権利取得(収用)に進めても、現場では住民が生活を継続している――このズレが「強行されている」という印象を生みやすい構図です。 (長崎県:事業の経緯(年表)

1. 石木ダムとは何を目的にしているのか(行政側の説明)

長崎県は石木ダムの役割を、主に「洪水調節(治水)」「水道用水の供給(佐世保市の利水)」「流水の正常な機能の維持」として説明しています。 (長崎県:ダムの目的・効果

利水(佐世保市の水道)について佐世保市水道局は、慢性的な水源不足の改善策として石木ダムを位置づけ、不足分の「日量4万m³」を新規開発する計画だと説明しています。 (佐世保市水道局:石木ダム建設事業の概要

一方で反対側は「水需要の見積り」「代替策(漏水対策など)」への疑問を掲げることが多く、ここが論争点の中心になります。佐世保市は漏水対策を進めつつも「漏水対策が進んでも石木ダムが不要にはならない」という立場を明記しています。 (佐世保市水道局:Q10(漏水対策でも不要にならない旨)

2. 住民は賛成・反対どちらが多いのか(“全員が反対”ではない)

「地域住民が反対しているから進んでいない」と語られがちですが、佐世保市水道局のQ&Aでは、建設予定地で家屋移転を伴う世帯は67戸、そのうち移転に協力した世帯は54戸(約8割)と整理されています。 (佐世保市水道局:Q2(家屋移転67戸・54戸移転)

ただし、移転完了が多数であることと、現在も生活が継続している世帯があることは両立し得ます。この「手続きの前進」と「現場の継続」が同時に存在する点が、外から見ると分かりにくさ(=強行感)を生みます。 (長崎県:事業の経緯(年表)

3. ここが本題:補償は「受け取っている人」と「受け取っていない人」が混在する

3-1. ふつうの(任意の)用地取得:契約して補償金を受け取る

長崎県は、土地取得・移転補償について国の損失補償基準等に基づき算定し、住民と契約のうえで土地を譲ってもらう、という枠組みを説明しています。 このルートでは基本的に「交渉 → 契約 → 補償金支払い → 移転」という合意ベースで進みます。 (長崎県:移転に伴う補償と生活再建

3-2. 反対で協力が得られない場合:収用委員会の「裁決」へ進む

合意が得られない場合、収用委員会の手続(審議)を経て、補償額や明け渡し等を含む「裁決(行政手続上の決定)」に進むことがあります。 長崎県は、補償金の受領を拒否された場合には法務局へ供託している旨を説明しています。 (長崎県:移転に伴う補償と生活再建

4. 「受け取ってないのに、なぜ進むのか?」— 法律のポイントを噛み砕く

土地収用法の枠組みでは、裁決がある場合、起業者(事業者)が補償金を支払う(または供託する)ことで、制度上の効果が発生します。 土地所有者が受領を拒否しても、供託所(法務局等)に供託することで「支払われたのと同様の効果」が生じ得る、と長崎県の解説資料でも整理されています。 (長崎県:収用委員会手続の解説) (長崎県:裁決手続きの概要(PDF)

つまり「本人が補償金を受領しない(拒否する)」ことと「補償が存在しない」ことは別であり、補償金は供託され、制度上は手続が進み得る――これが「受け取っていないのに進む」ように見えるメカニズムです。 (法務省:供託Q&A

5. 「判決は出ているの?」— 出ています(ただし“何の争いか”が重要)

石木ダムをめぐる争いには複数の種類がありますが、長崎県は「事業認定取消請求訴訟」「工事続行差止請求訴訟」などについて、最高裁段階で確定した旨を整理しています。 (長崎県:石木ダムの裁判とは

ここで混同しやすいのが、「裁決(行政手続:収用委員会)」と「判決(司法判断:裁判所)」の違いです。 用地取得の局面では、収用委員会の裁決(補償・明け渡し等)が大きな意味を持ち、別レイヤーで裁判(差止めや取消し)が争われます。 (長崎県:裁決手続きの概要(PDF)) (長崎県:石木ダムの裁判とは

6. 手続きの全体像(これだけ押さえると“何が起きてるか”が見える)

石木ダム問題は、ざっくり言うと次の「二段ロケット」で理解すると見通しがよくなります。 (国交省・九州地方整備局:事業認定(2013/9/6告示)

A. 事業を“やってよい”とする入口(事業認定)

国の手続により「公益性がある事業」として事業認定がされると、強制収用へ進み得る法的な入口が成立します。 石木ダムについては2013年9月6日に事業認定の告示が行われています。 (国交省・九州地方整備局:事業認定(2013/9/6告示)

B. 合意できない土地を“いくらで・いつまでに”と決める出口(収用委員会の裁決)

任意交渉でまとまらない場合、収用委員会が補償や明け渡し等を判断します。補償金は支払いまたは供託で法的効果が生じ得ます。 この仕組みがあるため、住民側が納得していなくても行政側は「法に基づく手続が整った」として事業を進めようとします。 (長崎県:収用委員会手続の解説) (長崎県:裁決手続きの概要(PDF)

7. 年表で追う:石木ダム問題の“いままで”と“いま”

8. 「出ない(立ち退かない)やつが悪い」の話ではない— なぜ対立が続くのか

この問題が難しいのは、どちらか一方が「悪い」で片付く構造ではないからです。行政側は「必要性」と「手続きの積み上げ」に基づき前進し、住民側は「生活の継続」や「土地への帰属」といった金額では置き換えにくい価値を軸に抵抗します。 (長崎県:移転に伴う補償と生活再建

さらに、必要性評価(「本当に水が足りないのか」「代替策はないのか」)は、事業の正当性に直結する論点であり、双方の見立てが一致しない限り、手続きが進んでも納得が生まれにくい構造になります。 (佐世保市水道局:Q10) (佐世保市:再評価資料(PDF)

まとめ

石木ダム問題は、「水・治水の必要性」を重視する行政側の論理と、「生活の継続・納得できない手続き」を重視する住民側の論理が、土地収用法の枠組みの中で衝突し続けている案件です。 (長崎県:目的・効果) (長崎県:収用委員会手続の解説

そして「補償を受け取っていないのに進む」ように見えるのは、受領を拒否しても供託により“支払いと同様の効果”が生じ得るという制度設計があるためで、そこに“現場で暮らし続ける人がいる現実”が重なり、強い違和感として表面化します。 (長崎県:裁決手続きの概要(PDF)) (法務省:供託Q&A


エビデンス(一次情報・公式資料・報道リンク)

※以下は、記事で根拠(エビデンス)として使えるURL一覧です。すべて( )で記載しています。

1) 長崎県(公式:目的・経緯・補償・完成時期・裁判・説明会)

2) 佐世保市(水道局:必要性・移転状況・漏水対策・再評価資料)

3) 国(事業認定の一次資料)

4) 法務省(供託制度の一般説明)

5) 報道(現状・工期延長・県議会決議・説明会など)

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